マルタウグイ
学名 Tribolodon brandti   コイ目   コイ科
分類群 5
RDBランク 8 (魚類)
和名 マルタウグイ
目科 コイ目   コイ科
学名 Tribolodon brandti
具体的要件 (1) 国際的、国内的に保護を要すると評価されているもの。
分布 東京湾、富山湾以北の比較的大きい河川に分布する。サハリン、アムール川流域と、ピョートル大帝湾から朝鮮半島まで分布する。
生息環境 比較的大きい河川の汽水域や沿岸域に生息し、東京湾などでは水深5m以浅の場所に限って生息している。中層ないし底層を遊泳するが、物音などに驚くと、水面に飛びあがることがある。季節的には夏季は表層に、冬季は深みに移動する。産卵期には川の中流域(Bb型)に遡上する。全長35mm程度で海水に対する抵抗性を獲得し、汽水域へ移るものも出てくる。北海道では岸に沿って外海にも出る。
生活史 産卵のために河川に遡上する遡河回遊魚。孵化仔魚は全長6.5〜7.0mm程度で、前期仔魚期は産卵床内で過す。孵化13日目で卵黄の吸収が終わり、摂餌を始める。全長35mmで海水に対する抵抗性を獲得し、汽水域に移動するものが出てくる。東京湾のものでは、1年で8〜10cm、2年で15〜20cm、3年で30cmに達する。最小成熟個体は33cmで、50cmを超えるものも稀ではない。かなり広い範囲に遊泳し、その速度はかなり速い。産卵期には中流域(Bb型)まで溯上する。
摂餌生態 仔稚魚の餌は浮遊動物や流下動物を食べる。成魚は主として、シオフキガイ・ホトトギスガイなどの、殻長1cm以下の二枚貝を飽食し、またゴカイなども食べる。
繁殖生態 産卵期は、関東地方では3月下旬から5月下旬、北海道の鵡川では6月中旬(水温16.5〜19.0℃)で、ウグイより遅く、エゾウグイよりは早い。産卵期の成魚には、体側に鮮やかな朱赤色の1本の縦条の婚姻色が現れる。産卵は雨による増水がおさまりかけ、水温が上がりかけるときに、新しい砂利が吐き出され堆積した淵尻や、砂利のひっくり返った瀬で行われる。産卵に先立ち雄が群れで動くようになり、そこに排卵した雌が順次群れにはいるか、雄に追尾されて産卵する。卵は石礫の下面に埋もれる。ウグイ・エゾウグイの産卵は昼夜に及ぶが、マルタウグイの産卵は夜間に集中することが多い。海から遡上するため,堰堤などがあるとそこでとどまり,産卵群が集中することになる。卵はウグイ類で最も粘着性が強い。卵径約2mmで,色はウグイやエゾウグイよりも乳白色みが強い。水深0.5〜1.5mの川の砂礫底で、石の上面や下面に卵を産着させる。水温11〜17℃では約5日で孵化する。北海道では、ウグイやエゾウグイとの間で雑種を作ることも少なくない。
生息状況 北海道における分布は局所的であり、他の2種と比べるとかなり少ない傾向にある。河口付近から溯上して産卵するため、堰などの河川横断工作物には適切な魚道が必要となる。汽水域を消失させるような河口部における潮止め堰などの設置に際しては、本種を含めた汽水性の魚類への影響に配慮する必要がある。
環境庁RDB1991
環境庁レッドリスト1999
水産庁1998
天然記念物
備考 異名:マルタ