分類群 |
5 |
RDBランク |
8 (魚類) |
和名 |
サクラマス(ヤマメ) |
目科 |
サケ目   サケ科 |
学名 |
Oncorhynchus masou |
具体的要件 |
(1) 国際的、国内的に保護を要すると評価されているもの。(2) 交雑可能な別種・別亜種が侵入し、純血性が失われるおそれがあるもの。 |
分布 |
'降海型:太平洋側では千葉県、日本海側では島根県以北の河川に恒常的に遡上する。分布の中心は北海道日本海側の河川で、北陸地方までの日本海側がこれに次ぐ。河川残留型:南限は鹿児島県川内川と宮崎県の広渡川で、アマゴの自然分布域(神奈川県酒匂川右岸側支流以西の本州太平洋側、四国全域、大分県以北の九州瀬戸内海側の各河川)を除く西日本を中心に広範囲に生息している。北太平洋のアジア側にのみ生息し、日本と朝鮮半島東岸が降海型サクラマスの分布の南限となる。 |
生息環境 |
日中の生息場である摂餌空間は魚体サイズの大型化により拡大・多様化するが、基本的にサクラマス幼魚の河川での生息場所は、餌となる流下小動物量を多く得られる礫底の流れの速い、河川形態Aa型の山地渓流が適しているといわれている。しかし、本州に比べ夏季の水温が低い北海道では、中小河川ではAa-Bb移行型の河口付近まで高密に分布していることも珍しくない。しかし、活動が不活発となる越冬期には、流れがほとんどない河岸や、川岸植物覆いかぶさったところ、淵の中の沈倒木や大きな石の陰などに幼魚は潜んで過ごす。夜間や出水時にも同様な環境のところが休息場や待避場として利用される。また、春に河川遡上し産卵期の秋まで川の中で過ごす回帰親魚も、代謝を低く押さえることが出来る流れの緩やかな深みなどを休息場とする。 |
生活史 |
一生を河川で過ごす河川残留型と、幼期に降海し海洋で成長・成熟したのち、川に産卵のために回帰する降海型とが同一卵体群内の生活多型として存在する。卵は12月中旬頃に孵化し、腹部の卵黄を栄養源として約4ヶ月間の仔魚期を砂利の中ですごす。3月下旬から5月始めにかけて、卵黄を吸収した体長30mm前後の稚魚が産卵床の砂利の間から抜け出てきて遊泳活動を始める。体長45〜55mmで初生鱗が形成され、遊泳能力も強まり稚魚期へと移行する。5〜7月の間の水温上昇期に急激に成長し体長70〜80mm以上に成長した雄が秋までに成熟に達して河川残留型となる。一方残りの雄とほぼ全ての雌のうち、秋に90mm以上に成長した個体は、生活2年目の春に銀毛に変態し、降海型になる。そしてこの時期に銀毛しなかった小型個体はその後に同じプロセスをくりかえし、いずれかの型に分岐する。銀毛した個体は5月から6月にかけて降海する。降海幼魚は日本列島の沿岸沿いに北上回遊し、7〜10月にかけてオホーツク海のサハリン東岸沖で越夏した後、晩秋に再び日本周辺の沿岸域に戻ってきて翌春の河川遡上期まで過ごす。雪解増水が始まると、親魚の河川遡上が始まる。 |
摂餌生態 |
河川内では水生昆虫や落下昆虫の無脊椎動物が主体となるが、降海後は端脚類のParathemisto japonica、オキアミ類のThysanoessa longipes、イカ類の幼生、ホッケ、キュウリウオ、サンマ、イカナゴ、ハタハタなどを捕食する。降湖型は湖沼への流下または落下した昆虫、ミジンコ類などのプランクトンやワカサギなどを食べる。 |
繁殖生態 |
4月から河川に遡上し、産卵期までの4〜6ヶ月間本流や大きな支流の深みで過ごす。成熟が進むと降雨の出水に乗って越夏場から上流の産卵場へ一気に移動する。産卵場は河川水の良く浸透する砂礫底の淵から瀬に移るかけ上がりのところが良く選ばれる。雌は尾鰭で砂利を舞上げ、産卵床をつくる。雌は雄とつがいになるが、周りには体長20cmに満たない河川残留型の成熟ヤマメの雄が群れる。産卵時にはこれらのヤマメも産卵床内に突入し、いっせいに放精する。抱卵数は魚体の大きさと相関があり、1200〜4000粒と変動する。卵径は約7mm、水温8〜10℃で50日前後で孵化する。 |
生息状況 |
通し回遊魚であるサクラマスの移動を妨げる河川工作物が数多く設置され、魚の生息環境に配慮を欠いた河川工事が繰り返されたことにより幼魚の利用可能水域が減少し、限られた幼魚分布域に遊魚者が集中するという悪循環によって資源減少をまねいてきた。このため、自然産卵のみで資源量を維持できる状態にはなく、人工孵化放流など積極的な増殖手法や、地域により特色を持つ禁漁処置のような繁殖保護施策によって、資源培養方法に取り組んでいる。 |
環境庁RDB1991 |
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環境庁レッドリスト1999 |
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水産庁1998 |
減少種 |
天然記念物 |
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備考 |
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