網走湖のヒブナ個体群
学名 Carassius auratus   コイ目   コイ科
分類群 5
RDBランク 7 (魚類)
和名 網走湖のヒブナ個体群
目科 コイ目   コイ科
学名 Carassius auratus
具体的要件 (1) 希少種に準じて保護に留意すべき種の地域個体群で、生息・生育域が孤立しており、その地域において絶滅に瀕しているか、その危険が増大しているもの。(2) 地方型としての特徴を有し、生物地理学的観点から見て重要と判断される地域個体群で、その地域において絶滅に瀕しているか、その危険が増大しているもの。
分布 北海道,本州,四国,九州,琉球列島の全域で見られる.従来、北海道に分布するフナは、キンブナ・ギンブナ・ゲンゴロウブナの3種とされてきた。しかし、琵琶湖からの移植種であるゲンゴロウブナを除き、北海道に生息するフナは、形態的な変異が著しく、本州産フナ属の分類方法(加福、1968)の適用が難しい為、従来キンブナとギンブナの2種に分けられていたものを、あわせてフナとした。なお、フナの突然変異で出現した体色が朱色のヒブナが、釧路の春採湖、厚岸の床潭沼、サロベツのペンケ沼・パンケ沼、名寄の智恵文沼、網走の網走湖等に生息している。朝鮮半島と中国大陸に広く分布する.
生息環境 河川では、中流域(Bb型)の淵、下流域(Bc型)の全域、平地の低湿地帯や沼地等に生息する。流れが緩やかで、水草が多く生育する泥底を好む。冬でも活動性がやや高く、深みへは下がらない。
生活史 一生を淡水で生活する純淡水魚。孵化仔魚は全長4.5〜5.0mm、孵化後4〜6日で卵黄を吸収して全長5.8〜6.1mmとなる。全長9.0〜9.5mmで尾鰭の条数は定数に達する。飼育条件下では、1年で全長8〜10cm、2年で14〜18cmになり、成熟する。
摂餌生態 雑食性で底生動物および藻類などのほかに、場所によっては動物プランクトンなども食べる。動物食よりも藻類を好む。
繁殖生態 産卵期は4〜6月で,河川の細流や田の側溝などの水草が繁茂している浅いところに集まり,水面に浮いた水草の葉や茎などに卵を産みつける。卵は直径1.4mmの球形で、強い粘着性を示す。従来ギンブナとされていた集団では、雄の数が極めて少ないのが特徴的で、ほとんどあるいは全く雄の見つからない所もある。他の魚類(ウグイ・コイ・ドジョウなど)の精子を刺激剤として使うと、人為的に雌性単為生殖を起こさせることが簡単で、しかも雑種としての形質は現れない。天然でも染色体数が倍数化した3倍体・4倍体の比率が高く、それらの個体は、雌性単為生殖をしている。体内卵数は、1800(全長11.5cm)ないし7200(全長15.5cm)程度である。産卵期間中に3回ぐらい産むといわれる。卵は球形で直径約1.4mm、卵黄は淡黄色ないし淡緑色である。3日(水温25℃)から10日(水温15℃)で孵化する。
生息状況 自然分布か否かは不明であるが、道内のほぼ全域の平・低地性の河川、湖沼やため池に生息している。淵や川岸の抽水植物や沈水食物が必要なので、河川改修時には、植生が回復するような工法を採用することが望ましい。ヒブナ生息地の春採湖は市街地に近いため水質汚濁が進行し、ヒブナの生存があやぶまれたが、最近の水質浄化対策により生息環境がかなり改善された。
環境庁RDB1991
環境庁レッドリスト1999
水産庁1998
天然記念物 国指定天然記念物(春採湖ヒブナ生息地/釧路市) 道指定天然記念物(厚岸床潭沼の緋鮒生息地/厚岸町)
備考 従来、北海道に分布するフナは、キンブナ・ギンブナ・ゲンゴロウブナの3種とされてきた。しかし、琵琶湖からの移殖種であるゲンゴロウブナを除き、北海道に生息するフナは形態的に変異が著しく、本州産フナ族の分類方法の適用が難しい為、従来キンブナとギンブナの2種に分けられていたものを、あわせてフナとした。「ヒブナ」は、種としてはフナに含まれるが、亜種ではなく、フナの突然変異によって出現した体色が朱色のものである。また、分布が限定されており、保護上、重要である。これらのことから、ヒブナの重要な生息地を地域個体群として選定した。