ベニザケ(ヒメマス)
学名 Oncorhynchus nerka   サケ目   サケ科
分類群 5
RDBランク 3 (魚類)
和名 ベニザケ(ヒメマス)
目科 サケ目   サケ科
学名 Oncorhynchus nerka
具体的要件 (1) 既知のすべての個体群で、個体数が非常に危険な水準にまで減少している。(4) すべての分布域において交雑可能な個体群が侵入している。北海道個体群が遺伝的に保持され、自然状態で再生産が行われているのは阿寒湖のみと考えられる。しかし、他の系統を含む個体群が阿寒湖にも移殖されており、遺伝的な交雑が生じていると考えられる。純粋な北海道個体群は、移植による支笏湖のものに限られ、野生絶滅に近い状態にある。
分布 国内における自然生息地は阿寒湖と網走川上流のチミケップ湖のみであったが、現在では移殖により道内では支笏湖、倶多楽湖、洞爺湖、本州では十和田湖、尾瀬沼、中禅寺湖、本栖湖等、中部以北の高地にある湖に分布している。国外では北緯40度以北の北太平洋、ベーリング海、オホーツク海に分布する。
生息環境 初期生活期の生息場所として湖沼を利用するため、ベニザケは亜寒帯域を中心とした湖沼のある河川に産卵遡上する。湖沼環境としては、夏季の高水温時にも水温10℃前後で溶存酸素が3ppm以上の層を持つことが重要となる。日本でヒメマスの移殖に成功した湖は、上記の条件を満たした貧栄養湖である。
生活史 本種は一生淡水域に留まる陸封型(ヒメマス)と海域へ下る降海型(ベニザケ)が存在する。ベニザケには、湖沼もしくは河川で数年生活した後に降海する湖沼長期滞在型、河川長期滞在型、および浮上直後に降海する海洋依存型の3型がある。国産ベニザケの場合の生活史を備考欄に示す。
摂餌生態 湖で淡水生活を送るベニザケの幼魚は、主にミジンコ類やカイアシ類などの動物プランクトンを摂食し、他にユスリカの蛹や落下した陸生昆虫も捕食する。海洋に出てからも動物プランクトンが最も重要な餌料となるが、小魚やイカ類も捕食する。
繁殖生態 国産ベニザケの産卵期は10月であるが、北米産は7月から12月と長期に及ぶ。産卵場は主に幼魚期を過ごした湖に注ぐ河川の砂礫底であるが、湖岸の湧水地帯で行われることもある。産卵は雌雄がペアとなり、雌が産卵床を掘り、雄は近づいてきた他の雄を追い払う。産卵後は雌雄ともに死ぬ。
生息状況 ベニザケは標津川と西別川に遡上したことがあり、現在でも釧路川では迷い魚とみられる個体が時々見られる。近年は、水産庁北海道サケマス孵化場が西別川、安平川、塘路湖、および屈斜路湖で試験放流しており、数は少ないが回帰している。なお、ヒメマスは遊魚用として支笏湖等に放流されている。
環境庁RDB1991
環境庁レッドリスト1999
水産庁1998
天然記念物
備考 主な確認地域図では、移殖による個体群も含めた道内全体の「ベニザケ(ヒメマス)」の分布を示している。         <生活史補足>国産ベニザケの場合、孵化仔魚はしばらく産卵床内で過ごし、浮上後は下流の湖に降りて1〜3年後に降海する。海洋で2〜3年を過ごし40〜65cmに成長した成熟個体は、6〜8月頃河川に遡上して湖の流入河川で10月頃産卵する。